深い悲しみから立ち直るには
心理学では、深い悲しみ(グリーフ、深い悲嘆)から立ち直るために
「喪失志向(悲しみに向き合うこと)」
「回復志向(新しい日常に適応すること)」
の両方を、振り子のように行き来することが不可欠であるとされています 。
どちらか一方だけに偏るのではなく、両方のケアをバランスよく行うことが大切です。
具体的な対処法を、この2つの視点に分けてもう少し詳しくご紹介します。
悲嘆の二重プロセスモデル
(Dual Process Model of Coping with Bereavement)
悲嘆の二重プロセスモデル
(Dual Process Model of Coping with Bereavement)とは、
大切な人を亡くした人(遺族)がどのようにその悲しみ(悲嘆/グリーフ)に対処し、適応していくかを表した現代の心理学・グリーフケアにおける非常に重要な理論です。
1990年代にMargaret Stroebe(マーガレット・シュトレーベ)と Henk Schut(ヘンク・シュト)らによって提唱されました。
それまでの「悲しみには決まった段階(ステップ)があり、一本道で回復していく」という直線的な段階説を批判し、
という動的なプロセスを提示しました。
モデルを構成する「2つの志向(コーピング)」
このモデルでは、遺族には異なる2種類のストレス要因があり、それぞれに対する対処法(志向)が並行して存在すると考えます。
| 項目 | ① 喪失志向(Loss-Oriented) | ② 回復志向(Restoration-Oriented) |
|---|---|---|
| 焦点 | 故人そのものや、失った痛みに向き合う | 死によって生じた、現実の変化に向き合う |
| 具体的な行動 | ・故人の思い出を振り返って泣く ・亡くなった事実に深く落ち込む ・故人への恋しさや切なさを感じる | ・新しい家事や手続きを行う ・仕事や趣味など日常の活動をする ・「故人のいない新しい役割」に適応する |
| 心の役割 | 悲しみを十分に体験し、心の整理をする | 一時的に悲しみから気を逸らし、生活を再建する |
悲嘆の二重プロセスモデルにおける最も重要な概念:
「揺らぎ(Oscillation)」
このモデルの最大のポイントは、
「揺らぎ(オシレーション)」という動的なメカニズムにあります。
遺族は、一日、あるいは一週間のうちでも、
「① 喪失志向(泣き崩れる時間)」
「② 回復志向(元気に仕事や家事をする時間)」
の間を振り子のように行ったり来たりします。
このモデルは、「個人の回復プロセス」や「感情の揺らぎ」「悲しみから一時的に離れ休息を取ること」を肯定的に捉えています。
悲しみに向き合い続けてしまうと、その状態に固執したり、硬直化が起こってしまったりして悲嘆の長期化を招くリスクがあるからです。
悲しみから「休む」ことの肯定
過去の理論では「悲しみから目を背ける(回避する)のは良くない」とされがちでした。
しかし二重プロセスモデルでは、「ずっと悲しみ続けるのは脳も体も持たないため、回復志向(日常)に逃げて、悲しみから一時的に『休息(リスプァイト)』を取ることは健康的な適応である」と考えます。
時間の経過による変化
死別直後は「喪失志向(悲しみ)」の波が非常に大きく、頻繁に訪れますが、時間が経つにつれて徐々に「回復志向(新しい生活)」で過ごす時間の割合が増えていき、揺らぎの波が少しずつ穏やかになっていきます。
「喪失志向」の対処法(悲しみにしっかり向き合う)
悲しみを抑え込まず、心の中から外へ出すためのアプローチです。
感情を言語化して外に出す
(表出)
悲しみ、怒り、後悔、寂しさを、信頼できる人に話したり、ノートにありのまま書き殴ったりします。
感情を外に出すことで、脳のパニックが落ち着きます。
涙を我慢しない
泣くことは、ストレスを軽減させる生理的な自己防衛反応です。
泣きたいときは思い切り泣いてください。
記念碑的な行動(儀式化)を行う
お墓参り、仏壇やメモリアルスペースへの語りかけ、アルバムの整理などを行います。
失った対象を「消し去る」のではなく、「心の中で新しい関係(思い出)として再配置する」ためにとても有効です。
「回復志向」の対処法(日常や新しい役割に適応する)
悲しみから一時的に離れ、自分の生活を維持・再建するためのアプローチです。
悲しみから「意図的に避難」する
24時間悲しみ続けると、心身が燃え尽きてしまいます。
映画やドラマを観る、趣味に没頭する、仕事に集中するなど、あえて「悲しみを忘れる時間」を自分に許してあげてください。
これは逃げではなく、心を休ませるための必要な防衛策です。
生活のリズムと身体のケアを最優先する
強いグリーフは免疫力を下げ、不眠や食欲不振を引き起こします。
「眠れなくても横になる」「温かい水分を摂る」「少しだけ散歩する」など、まずは体を壊さないための最低限のケアを行います。
新しい役割やスキルを少しずつ受け入れる
例えば、亡くなった家族が担当していた家事を自分がやるようになるなど、変化した現実の生活に少しずつ慣れていく行動自体が回復へのステップになります。
「孤立」を防ぐための対処法
同じ境遇の人とつながる(自助グループなど)
周囲に気を遣わずに本音を話せる「グリーフケアの集い」やコミュニティに参加することは、孤独感を和らげる強力な助けになります。
専門家を頼る
日常生活(睡眠・食事・仕事など)に支障が出るほどのつらさが数ヶ月以上続く場合は、精神科や心療内科への受診、臨床心理士などのカウンセリングを受けることも一般的な対処法です。
回復のプロセスは、一直線に良くなるのではなく、
「良くなったり、また激しく落ち込んだり」を繰り返しながら、全体として少しずつ波が小さくなっていくものです。
今日悲しくても、「昨日の前進が無駄になった」わけではありません。
ゆっくり時間をかけていいのです。
お知らせ

私もコロナ禍を経て、色んなことを失いました。
仲が良かった人たちとのご縁、住む場所・お気に入りの場所、お仕事、お給料、社会的地位、大好きだった趣味などなど…
それまでの人生の中でも失うことは多かったですが、やはり私にとってコロナ禍は特別で、色んな喪失がまとめてやってきた感じ。
それらを一旦捨てようと決めたのは私自身でしたが、無意識的に執着していたのか、立ち直るまでには時間がかかりました。
実際には、ある部分では納得しているけれど、またある部分では納得しきれていないこともある。
そんなところでしょうか。
でも、失ったことがある反面、この数年で積み上げてきたこともたくさんあります。
色んな辛いことを乗り越えて、また新しい自分に✨
人生は自分自身の破壊と再生の繰り返しだなと思う今日この頃です。
大変だけど、マイペースにやっていくことにいたしましょう。笑
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